父親の物語「心が楽になる」⑥

盲目の世界はとにかく怖かった。


どこにものがあるかわからないし、人がいるのかどうかもわからない。


すごく孤独に感じるし、もう一度目が見えるなら何をしてもかまわないと思った。


しかしそんな世界も日をこなせば慣れてくる。


音声式のパソコンを毎日聞いたり、同じように目の見えない人の集まりに参加したり


体を動かすためにスポーツジムにいったりしてそれはそれで充実した日々だ。


ギャンブルに狂った息子がいまはちゃんと治療をして俺に手紙を書いてくれた。


それを妻と一緒に読んだ。


おれが酒で酔った時に息子に気持ち悪いといったことがショックだったと書いてあった。


最後には目の見えない気持ちはわからないけど応援していると書いてあった。


息子が家に帰ってきたときに、息子に言ってそばにきてもらった。


そして今まで酒のんだりしてやってきたことはお前らにとっては虐待かもしれん、ごめんなと伝えた。


何か迷ったときは心が楽になる方を選べ、


そのほうがいいかもしれんと自分の経験を語った。


息子の表情は見えないのでうまく伝わっただろうか。ありがとうといって息子は去っていった。


酒におぼれなければ別の道があったかもとかんがえることもあるけど、


こないだ家族で外食に行ったときにおもった。


家族団らんで楽しいひと時、俺が本当に求めていたのはやっぱりこれだなあと。


もう手放してしまわないようにこれからは生きていきたいと思う。




おわり。

ギャンブル依存症克服体験談をもとに会話ベースで小説風に仕上げてみました。