高校を卒業した俺は東京に出てきていた。
そびえ立つ大きなビルの数々。さっそうと歩く大勢の通行人。
そんな大都会にいると自分の存在がちっぽけなものに思えた。
さて、今日も寝床を探さなくては。
俳優を目指して東京に出た俺は、テキトーに女を作っては宿代わりにしていた。
「あんたいつまでいるのよ」
そういわれることもあったが、そういう時はまた違う女のところに転がり込んだ。
そんな生活をしていたが長くは続かず、すぐに地元に戻った。
親父からはしきりにまともになれといわれていた。
嫌だったがしぶしぶ親父の工場で働くことにした。
ふるっちぃ機械やあくせくして働く従業員たち、どことなくみじめに思えた。
小さい会社だったが二世だということもあり既存の社員には煙たがられた。
大人ってしょうもないなと思いながらも、そんな社会にだんだん染まっていった。
働くことによって多少のお金も入った。
うちの家族や親戚は車を買うときには、身内にホンダの人間から買うのがお決まりとなっていた。
しかし俺はトヨタの乗りたい車があったのでそれを乗り回していた。そのことを悪く言う親戚もいたが、気にはしなかった。
お気に入りの車で飛ばしているときだけは、嫌なことや将来への不安を忘れられた。。。続く